外の人

おれの見る夢にはデパートがよく出てくる気がする。今日見た夢にも出てきた。小さい頃祖母によくデパートに連れて行ってもらったものだ。たぶんそれに起因している。祖母も出てきたし。

夢から醒めたあとはいつも、夢の中で会った人に会いたくなる。何だか急に申し訳ないような気持ちになって、過去のことを後悔したりとか、お互い生きてるうちに言える事を言っておきたくなったり、ぐるぐるしてきて、何も集中できなくなる。
そんなだから、故人が夢に出てきたらおれはきっと泣いてしまう。言いたいこと、謝りたいことはもう、永遠に届かないのだ。たとえそのひとの墓前で罪を告白したとしてもそれは都合の良い自己満足だとしか思えてならない。本人からの言葉でなければ絶対に認めないだろう。我ながら面倒くさくてしょうがない。
だから故人に会うことは怖い反面、せっかく夢なんだから堂々と出てきて何か喋ってほしい。

不思議なことに、おれの見る夢には故人が一切出てこない。顔を忘れているわけでは絶対にないのに、1人も出てこない。もしかするとおれは相当淡白な死生観を持っているのかもしれない。話したいことがたくさんあるのに。墓や仏壇の前でしゃべるのじゃどうにもダメなんだ。返事が返ってこないし、おれの中からも何もでてこない。都合よく故人の返事を想像できないししたくない。「今ごろ天国でどうしてるかな」葬式の仕出し弁当を食べながら交わされるそんな会話にいつまでも入れずにいる。結局その人が何を思っていたのかなんて、その人にしか分からない。美談や教訓として語り継ぐかクズだったと吐き捨てるかは残った人の言ったもん勝ちに過ぎず、もし魂が四十九日留まり続けるというのなら、あーだこーだ言う親類の頭の上で、意地悪な顔でほくそ笑むくらいでいてほしい。誰もが心に秘密を抱えたまま、勝ち逃げしている。とてもずるいと思う。

夢の内容を書こうとおもっていたんだけどなあ。もうあまり思い出せないや。たしか霊峰の頂上から自転車で転がりながら落ちる。あとデパートの中で雪合戦。たしかそんな感じだった。