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思春期の椅子

社会人になって2度目の夏になる。ぎこちなさもとうに抜け、去年の今頃はといった感慨も特にない。より充実した生活を送るべく、これまでにいくつもの習慣が生まれては消えていった。揉み合い圧し合い擦り合せて残ったのは、使いどころのない瓶詰めのチリソース。トルティーヤ完全食主義を掲げていた時の遺物だ。若く生力に溢れていたおれは生き急ぐあまりに間違ったことをたくさんした。低いテーブルとやけに高い座椅子もそのひとつだ。使いづらいわ馬鹿か。


厳選され生き残った習慣のひとつに、夜勤明けの休みに映画を観に行くというものがある。うちの会社は班ごとに勤務時間がローテーションされるシステムなので20日ごとに1度映画館に足を運ぶことになる。そして映画館はいつも近所の大きめなショッピングモールではなく、国道を片道2時間かけて隣の県のTOHOシネマズでレイトショーを見る。自堕落で気分屋なおれだけど、不思議にもこの習慣は続いている。
映画館へ向かう車中、きまってブルーハーツのCDをかける。かけながら、きまって大声で歌う。喉が枯れて声が出なくなるまで歌う。対向車の視線なんて無視して、音程を二の次にして大声で歌う。いつも8曲目あたりで声が出なくなるから、9曲目からはもう鼻歌混じりになる。一周したらまた別のブルーハーツのCDをかける。たまにサカナクションもかける。暑さで柔らかくなったボトルガムを噛んだりコーヒーを飲んで、休んだらまた歌う。満足したらまたボトルガムを噛む。ボトルガムは1度に2粒口に入れる。


帰りにはAMの深夜ラジオを聴く。たまに菊田研究所をかける。帰りは車通りも少ないので、行きの半分の時間で帰ることができる。
帰りながらいろんなことを考える。さっき見た映画の内容が、その時だけはどこか遠くに行ってしまう。そしていつも、何も考えがまとまらないまま部屋に着いて、泥のように眠る。そんな習慣が、半年くらい続いている。