がんばれバナメイエビ

平日の昼にスーパーに行くと、入り口で試食を勧められた。ぶどうの試食だった。ぶどうは好きだけど、足を止めて売り文句を聞いていると、時間を割いてもらっているし買わないことには申し訳が立たない気持ちに駆られてしまうので遠慮した。

冷房の効きすぎる精肉売り場をうろついていると、体操服を着た中学生が台車を転がして通り過ぎ、バックヤードに消えた。腕章をつけていたので、職場体験というやつだろう。見れば店内のあちこちで、腕章をつけた中学生たちが棚の整理を手伝ったりしている。入り口で試食を勧めてきたのもその1人だったことにようやく気付く。ぶどうの乗ったトレーを抱えて、入り口の向こうの駐車場をじっと見つめていた。せめて話を聞いてあげれば良かったかもしれない。

自分が中学生のときは、職場体験の時期にインフルエンザが流行って学級閉鎖になり中止になってしまった。文化祭も参加できなくなって散々だったことを憶えている。たしかおれは農協で職場体験をするはずだった。

1日を終えて帰宅した彼らは、親にいつもよりちょっとだけ優しくなったりするんだろうな。

柔軟剤を買い忘れたことに帰ってから気づいたが、買ってきたポテトサラダを食べたらどうでもよくなった。