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ミリオンカラー・エディション

友人はその名の通り、緑色が好きだった。小さな庭にはよく手入れされた芝生が青々と敷き詰められていて、身につけるものは靴下から時計まで、黄緑やエメラルドグリーンといった様々なカラーバリエーションのものを選び、冬はきまってビンテージの煤けたモッズコートを羽織った。

緑色でないところといえば肌の色と髪の色くらいであり、その昔、なぜ髪は黒のままなのかと私が尋ねると、緑は土壌に芽吹くものだ、土の黒なくして緑は緑たりえない、と言った。緑に黒が大事なことは分かったよ、じゃあその白い肌はどうなのだ、もしかして鳥のフンじゃないだろうね。

私の軽口に友人は、コーヒーの入ったカップを置き顔をわずかに傾げて、目を細めた。

太陽さ。

無神論者がする聖人の瞳に、私はもうそれ以上何も言えなくなった。その店の勘定は私が自ら払った。

 

友人は休みのたびに都市を離れ、各地の山々を巡った。金曜日に別れるとき、いつも、もしかしたら彼は帰ってこないのではないかという気がした。そうだとしてもなんら不思議なことではなかった。それこそが友人の本懐であり、条件に合う山をずっと探しているのだと思っていた。真っ暗な土の中でほんのり白く輝く彼の骸が、明日の遠足を待ちわびる子供のように笑っている。そんなイメージが時折、頭にちらついた。

 

週末、友人に初めて誘われた。驚きはなかった。その瞬間に全てを理解して、ああ、ついにこの時が来たのだなという淡々とした感慨だけがあった。私は有無を言わずそれを了承した。

 

山には緑は見当たらず、ごつごつした砂利の灰色と雪の白だけがあった。気圧の変化に頭が締めつけられ、何度か吐いた。友人は私を心配したが、構わず登り続けた。しばらく無言でひたすらに登り続けた。息が凍り霧の中へ消えた。

 

山の頂上から見る朝日は、神聖で、普段みているものとはまったく異なる、別世界のもののように思えた。汗が冷えるのも気にせず、しばらく見入った。墓標になるものを持ってくるのを忘れたことに気づき、持って帰る体力もなかったので、用済みになったシャベルを深々と突き刺しておいた。

眠る友人の隣に腰掛けて、タバコに火をつけた。しかしもはや肺は紫煙に割ける容量を持ち合わせておらず、ひどく咳き込んだ。諦めて大の字になると、空の蒼が視界いっぱいに飛び込んできた。

蒼い。なんて蒼いのだろう。今まで見てきたものよりはるかにずっと蒼い。蒼穹のその先に宇宙が広がっているとは思えなかった。きっとどこまで行っても青色で、昼も夜もないのだ。墓参りは大変そうだけど、この青色が見られるのなら、悪くない。

都市に帰ったら、青い時計でも買おうと思った。