お話

合流

comitia125で頒布した同人誌「ウルトラB」の一編です 外回りのときによくサボりに使う喫茶店がある。客はまばらで店内はいつも日陰になっているし、会社からも遠いので居心地が良かった。 通りに面した席からはオフィスビルと居酒屋の間に生まれた空き地が見…

ウルトラB

comitia125で頒布した同人誌「ウルトラB」の一編です 男は聖書が読めなかった。字が読めないのでなく、根気の問題だった。それに、読む理由もなかった。男は教会に住んでいるというだけであって、聖職者ではなかったからだ。廃墟に流れ着いただけの、ただの…

ヴァイオレット・パープル

身体を壊してしまったという友人宅へ見舞いに行ったが、友人は居なかった。部屋の電気は付けっ放しにされていて、まったく日の当たらない立地と生活感の希薄さのせいですこし肌寒い。どこか買い物に行ったのだろうと思い持ってきた本を読みながら部屋で友人…

ダミー・バー・ヘッド

開け放した窓から空を見上げたら、蜘蛛の巣を見つけた。ふと手を伸ばすものの、何度やっても空を切る。 はて。どうやら空に巣を張っているようだ。戦闘機が引っかかっている。脱出したパイロットは、やはり蜘蛛の糸に絡め取られていて、むしゃむしゃと食べら…

ミリオンカラー・エディション

友人はその名の通り、緑色が好きだった。小さな庭にはよく手入れされた芝生が青々と敷き詰められていて、身につけるものは靴下から時計まで、黄緑やエメラルドグリーンといった様々なカラーバリエーションのものを選び、冬はきまってビンテージの煤けたモッ…