スモークガラス

インフルエンザが流行りはじめているというので、使い捨てのマスクをしていた。けれど顎のあたりがとても痒くなって、すぐに外して捨ててしまった。

顎に生えた髭のせいだ。まだ柔らかい髭が固い紙製の生地にあたって、とても心地が悪い。ついでにうつ伏せで寝ると枕にあたってこれまた心地が悪い。

 

剃ったら剃ったで鏡で見る自分の顔にとても違和感があるので剃らないようにしている。つまりおれは、19年髭無しで生きてきた実績より、1年髭を生やして生きてきた現在の「それっぽさ」を信頼している。

髭の存在が、19対1のワンサイドゲームをひっくり返す要因だとは到底思えないけど、実際そうなっているのだ。人の価値観や認識はあまりあてにならないのかもしれない。

 

マスク繋がりでいうと、日曜日にガスマスクをして茶畑の跡地を走り回っていた。サバイバルゲームというやつをしていた。

眼鏡とガスマスクは併用することができず(昔はガスマスク用の眼鏡があったらしいが)、コンタクトレンズを持っていなかったので裸眼でガスマスクをした。視力が少し回復していたのか、あまり困ることはなく楽しくプレイすることができた。

日中はそのまま、休憩中も裸眼で過ごしていたのだけど、スマホ画面の黒色に反射した自分の顔に、また違和感を覚えた。それは、眼鏡をしていないということに対してのものだった。

裸眼で過ごしてきたのは17年、眼鏡をかけたのはそれからの3年だ。また歴史の浅い方である現在に感覚が寄っている。自分の幼少期の頃からの顔を正確に思い出せはしないし、毎日鏡を見るうちに「それっぽさ」は徐々に徐々に推移していくものだとしても、自分が見ている自分が、だんだんと知らない人になっていくようでなんともいえない気持ちになる。

これから先、鏡の中の自分にもはやひとつも確信が持てなくなったとしても、久しぶりに会った友達は「変わらないな」と言うのだろうか。

同窓会行くのやめようかな。